さて、前回の記事では、透析患者さんは痩せていると死亡リスクが高く、太っているほど死亡リスクが低いということをご説明しました。
今回の記事はBMIシリーズ②をご理解いただいた上でお読み頂きたいと思いますので、まだ御覧になっていない方はこちらの記事をお読みください。
その質問に答えるには、少し慎重になる必要があります。太っている透析患者さんの方が長生きだという報告を「BMIシリーズ②:痩せている透析患者さんは、死亡リスク上昇!」でご紹介しました。しかし「太っていること」と「太ること」は違う可能性があります。
太っていることと太ることは同じだわん。
きど兄、ご乱心か?
例えば、きどっぐが、猫のようにネズミを追いかけて、お魚を食べて、にゃんにゃんしゃべったとしても、猫の体質になるわけではないですよね?
つまり、太っている透析患者さんは長生きですが、それは太りやすい体質を持った透析患者さんが長生きということなのか、痩せやすい体質でも頑張って太れば長生きになるのか、という問題です。
なかなかややこしいですよね・・・。
さて、もう一度、きどみゃーの最初の質問「透析患者さんは太った方が良いってこと?」について考えてみましょう。この質問に答えるためには、太っている透析患者さんと痩せている透析患者さんの比較ではなく、一定期間に体重が増えた患者さんと、体重が減った患者さんの比較をしなくはなりません。
実は前回もご紹介した論文は、きどみゃーの質問に対しても答えを用意してくれています。ちなみにこの論文は、透析患者さんの体重と長生き度合いについて、たくさんの論文をまとめてくれているような、大変重要な報告です。
[Racial and survival paradoxes in chronic kidney disease, Nat Clin Pract Nephrol 2007 Vol. 3 Issue 9 Pages 493-506]という論文より引用
下の図を御覧ください。
(クリックすると画像が拡大されます)
この図では体重変化と死亡リスクの関係が示されています。
真ん中にある棒グラフが体重変化がない透析患者さんを表しています。
右側の濃いグレーの棒グラフは、体重が減った透析患者さんを示していますが、体重の減少の度合いが大きいほど、死亡リスクが上がっていることが読み取れます。
逆に薄いグレーの棒グラフは、体重が増えた透析患者さんを示していますが、体重の増加の度合いが大きいほど、死亡リスクは低下していることがわかります。
つまり、太っていることだけでなく、太ることも死亡リスクの低下につながることがわかります。また痩せていることだけでなく、痩せていくことも死亡リスクの上昇につながることがわかります。
特に、体重が低下することによる死亡リスクの上昇はインパクトが大きいです。
きど兄がお勧めする「長時間透析と自由食」の治療は、しっかり食べて痩せを回避して頂き、その分、長時間の透析で除水やリン、カリウムの管理をサポートさせて頂く治療です。
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